学習とは?~神経生物学の視点から教育理論を捉える~

4つの学習サイクル

 ケース・ウェスタン・リザーブ大学生物学・生化学教授のジェームズ・ズール博士が『学習』について答えているインタビューが興味深かったので概要をご紹介致します。

 

 

 学習には一定のサイクルがあり、その『学習サイクル』には4つの段階がある。

 

第1ステージ:具体的な経験をする

 

第2ステージ:その経験を検証して、自分が既に持っている情報との繋がりを見い出す

 

第3ステージ:仮説を立てる

 

第4ステージ:その仮説を能動的にテストする

 

 第4ステージに踏み出すことで新たな経験が出来る。そこから次の学習サイクルが始まり、これを繰り返すことで人は成長していく

脳内で起こっていることおよびその働き

 上記第1~4ステージを処理している脳の場所と働きをまとめると

 

第1ステージ:感覚野を活性化させて、情報を得る

 

第2ステージ:後連合野の中で、その情報に意味を与える

 

第3ステージ:前連合野の中で、その意味から新しいアイデアを生み出す

 

第4ステージ:運動野を使いながら、そのアイデアを実行する

経験学習サイクルに必要なもの

 学習の柱は、収集・分析・創造・実行の4つ

 

 ただし、この方法で学ぶには『努力すること』に加え、『今いる快適なゾーンから出ること』が求められる。 学習の鍵となるのは、自分を突き動かす動機。それに加え、学んでいるのは、誰でもない自分だという当事者意識

 

 経験学習サイクルを長続きさせるには、自分を律しコントロールしているという感覚、進歩しているという感覚が大切。

脳のタイプ別に必要な助け

 経験学習サイクルを行うにあたって、シンプルに脳のタイプを分類すると内向的なタイプ(①)と外交的なタイプ(②)の2つに分けることが出来る。

 

①:内向的な傾向を持つ人は、熟考し抽象的な仮説を立てる段階に向いている(第1~3ステージが得意)その反面、仮説を能動的に試す段階には不向き(第4ステージが苦手

このタイプの人には、自分のアイデアを安心して話せたり質問出来たりするグループ作りやリスクに踏み出しやすく環境作りの助けが必要。

 

②:外向的な傾向を持つ人は、仮説を能動的にテストする段階に向いている(第4ステージが得意)その反面、熟考や抽象的な仮説を立てる段階が不向き(第1~3ステージが苦手

このタイプには、熟考したり、抽象的な仮説を立てる時間を増やすようなアドバイスを送ることが必要。時には、文字に書き出してその結果を予測する訓練を行うことも助けになる。

学習と大人の脳

 脳は何歳になっても変わりうることが分かっている。ニューロンは、同じ場所が繰り返し使われると新しい繋がりを増やしていくので、実際、学習には限界はないと言える。いくつになっても、自分を学習へと動機づけていく能力を開発することが大切。

 

 脳は自分の庭のようなもの。自らが良き園芸家となり、神経細胞間のネットワークを耕すことで、これまでの学びとこれから学びたいことを繋げることが出来る。

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