人は、「今より収入が2倍になれば2倍幸せに、10倍の収入になれば10倍幸せになる」と思いがちだが、実際はそんな単純な倍々ゲームにはならない。
収入の増加による幸福度の上昇は、ある一定の水準まで到達すると頭打ちとなる。つまり、どこかの時点で幸福度の上昇は止まり、それ以降はいくら収入が増えても幸福度は変わらなくなる。
2010年にノーベル賞を受賞した経済学者のダニエル・カーネマンの主導で行ったギャラップ調査(※)によると、だいたい年収7万5000ドルを超えた辺りで幸福度の上昇が止まることが明らかになっている。
※アメリカ世論調査研究所が行う世論調査のこと。調査精度が高く、民間の世論調査会社の調査としてはアメリカで最も信頼性が高い。
また同じ2010年に、経済学者のリチャード・イースタリンが自身が1974年に発表した学説(通称「イースタリンの逆説」)の最新版を発表した。調査は複数の大陸の先進国・発展途上国で行われ、その結果、国が豊かになり始めた頃はそれにつれて国民の幸福度も上がっていくが、10年もしないうちに豊かさの向上と幸福度の上昇は比例しなくなる。つまりこの学説によると、国の豊かさとその国民の幸福度は必ずしも相関しないとされている。
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