「流れ」は存在するのか?
1985年、トーマス・ギロヴィッチ、ロバート・ヴァローネ、エイモス・トヴェルスキーという3人の心理学者がバスケットボールに関するある調査を行った。
長年、関係者やファンの間では、何度か続けてシュートを決めた選手は「のってきて」、次のシュートの成功率が通常よりも高くなると信じられてきた。いわゆる「流れ」が出来ると言われるものだが、その真偽を3人は検証した。その際、続けてシュートを外した選手は、次のシュートの成功率が通常よりも低くなるのかも併せて検証した。
3人が調査したのはNBAのフィラデルフィア・センブンティシクサーズというチーム。実際の試合データから、シュートを成功させた、あるいは失敗した選手が次のシュートをどのくらいの確率で成功させているのかを調べた。その結果、成功が続いた後・失敗が続いた後のどちらの場合でも成功率に有意な差はなかった。
データによると、シュートに一度成功した場合、次のシュートの成功率は51%だった。逆にシュートに一度失敗した場合、次のシュートの成功率は54%だった。さらにシュートに2回連続で成功した後の次のシュートの成功率は50%だったが、2回連続で失敗した後の次のシュートの成功率は53%だった。
成功後でも失敗後でも成功率に大きな違いはなく、このデータに限っていえばむしろ失敗後の方が成功率が上がっていた。
この調査結果から3人は一般に信じられている「流れ」というものは実は存在せず、時折あるようにみえてもそれは単なる偶然に過ぎないという結論を下した。
コインを繰り返し何度も投げれば、表が出る回数と裏が出る回数はやがて半々に近づいていく。だが、10回しか投げなかった場合、どちらかに極端に偏ることは十分にありえる。5回連続で表もしくは裏が出続けることもあるが、それは確率にしてわずか6%ほどだ。
その10に続く
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