これまで紹介してきた実験結果等から、一流のスポーツ選手にとって予測や先読みと動作の最終目的への集中が非常に大切なことであることは分かった。
ただ、この予測能力を阻害しないための万能の方法というものは現在のところ存在しない。
また集中しすぎるのも良くないことが別の実験で明らかになっている。
心理学者のシアン・バイロックはゴルフの上級者と初心者を被験者として、2種類のパターのどちらかを使ってパットをしてもらう実験を行った。1つは普通のパターで、もう1つはS字型をしていて異様に重いという変わったパターを使用した。
まず全員が距離を5通りに変えて合計100本のパットを打った。その際「正確さも大事だが、出来るだけ急いで打つように」と指示が出された。
その後、全員が再度同じように100本のパットを打ったが、今度は「どれだけ時間をかけてもいいので、とにかく正確さを大事にして打つように」と指示が変更された。
結果、S字型の変わったパターを使った被験者は、上級者・初心者ともに時間をかけた方が総じて結果が良かった。一方、普通のパターを使った場合、上級者の被験者は時間をかけた方が結果は悪くなった。
時間をかけるということは、頭で考える機会が増えやすいことも意味する。特に上級者の場合は、下手に頭で考えると出来るはずのことが出来なくなってしまう。習熟度によっては急ぐことが必ずしも悪いとは言い切れないのだ。
その8に続く
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