見えると見えない!?
2010年、クリケット・オーストラリア主催のある協議会で、ひとつのトレーニングツールが紹介された。
それはコンタクトレンズで、装着すると視界が四段階でぼやける。このレンズを装着した打者にプレーさせる実験も行われ、効果が実証されているものだ。
第一段階では「歪みなし」の視界だが、最高の第四段階になると完全にぼやけて「ほぼ盲目」状態になってしまう。
実験では少し視界がぼやける程度では、打者のプレーには全く影響がなく第三段階の歪みでもそれほど問題なく打てた。このことから打者はボールを眼で追って打つのではなく、投げられた瞬間にボールの方向を予測していることが分かる。なので視界が多少はっきりしていなくても問題なくプレー出来た。
またこの実験では打者が余計な事を一切考えない方が予測が正確になることも分かった。
視界がぼやけると予測に頼るしかないので、投手の手や足の動きさえ見えればそれを基にスイングするしかない。余計な思考が無い方が予測を妨げる恐れが少なく、結果として予測が正確になる。
ただし経験豊富なクリケット選手でも、クリケット以外のスポーツではボールの行方を上手く予測出来ない。予測できるのは、クリケットの投手の動きをよく知っているからで、それ以外ではこの予測能力は発揮出来ない。
2009年にテニス選手を対象に行われた実験でも同様の効果が確認された。テニス選手に視界のぼやけるコンタクトレンズを装着させて、サーブされたボールの行方を予測してもらう実験を行ったところ、同様に高い精度でボールの行方を予測できた。
動きを予測する際、細部の情報はあまり重要ではない。動きを予測する時や反応する必要がある時には、細部についての情報がある方がかえって邪魔になる場合さえある。
その7に続く
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