スター選手が揃うチームの重圧
ジョルデは国際大会で1度でも優勝経験のあるヨーロッパの8カ国の代表チームについて、過去30年間の主な国際大会でのPK戦の結果を分析した。
分析にあたっては、8カ国の戦力を
・代表チームの主な国際大会での成績
・その国のクラブチームのチャンピオンズリーグでの優勝回数
・メンバーに含まれる前回のランク①に相当する選手の割合
の3つの指標で評価した。
その結果、3つの指標での評価が高い代表チームほどPKの成功率が低く、しかもシュートを蹴る選手に回避の行動が多くみられた。
最も顕著なのはイングランドで、チャンピオンズリーグに優勝したクラブチームの数ではトップ、ランク①に相当する選手の割合では2位だが、PK成功率は最下位だった。さらにイングランドの選手は、他国の選手に較べて、キーパーの方向を見ない傾向があった。
過去の歴史の影響!?
ジョルテはまた、チームの過去の戦績も考慮に入れたうえで、各チームの過去のPK戦の結果を比較・分析した。(過去30年間の主要大会)
その結果、過去にPK戦負けを喫したことのあるチームは、一度もPK戦を経験していないチームやPK戦で勝ったことしかないチームに較べて、PKの成功率が低下するということが分かった。さらにシュートを蹴る本人がPK戦の経験者だった場合、その時の勝敗によって次のPK戦でのシュート成功率がさらに大きく違ってくることもわかった。
過去のPK戦で勝ったことしかないチームでは、PKの成功率は87%。ところがPK戦負けを一度経験しているチームでは、成功率は63%まで下がる。PK戦の経験自体がないチームでは成功率は76%だが、PK戦負けを二回以上喫しているチームでは、成功率は46%まで下がる。
これだけでは「弱いチームがまた負けただけでは?」という疑問が生じるが、PK戦に弱いチームの方がPK戦のない試合での戦績はよいという傾向が、対象となった最高レベルのチームではみられた。
つまり、ジョルテの定義でいう優秀な選手を多く抱えているチームほどPK戦には苦労していることが分かる。
ただでさえ「決めて当たり前」と思われるPKで、過去の記憶から「今度もまた失敗するんじゃないか」という思いがよぎる。呪いの歴史を断ち切れるのか、それとも恥の上塗りになるのか、全て自分の肩にかかっていると分かっていて平静でいられる人間は決して多くはない。
その4に続く
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