心理学者のロバート・チャルディーニ氏らが、家庭の消費電力を抑えるためにどういったインセンティブ(※)が有効かを実証するためにあるアンケートと実験をカリフォルニア州で行った。
※一般的に動機づけや報酬等の意味で使われますが、ここでは包括的な意味合いを含むためあえてそのまま使います。よく似た言葉でモチベーションと混同する方がいますが、インセンティブは外部からのもの。モチベーションは自発的・内部からのものです。
まず行ったのは電話でのアンケート。
Q.あなたが省エネに取り組む理由として、次の4つの要因はどれくらい重要ですか?順位付けを行って下さい。
A.
・お金の節約になる。
・環境保護になる。
・社会のためになる。
・多くの人がやっている。
この質問はそれぞれ
・金銭的インセンティブ
・道徳的インセンティブ
・社会的インセンティブ
・群集心理インセンティブ
となっており、アンケート結果は
①環境保護になる(道徳的インセンティブ)
②社会のためになる(社会的インセンティブ)
③お金の節約になる(金銭的インセンティブ)
④多くの人がやっている(群集心理インセンティブ)
となった。
そして、これを基に現地で実験を行った。
カリフォルニア州のある地域の住宅の玄関ドアに「温かい時期にはエアコンの代わりに扇風機を使って省エネをしましょう」と書いた5種類のカードをぶら下げた。
それぞれの見出しと説明文は異なり、1つは「エネルギーを節約しましょう」という普通の見出しと説明文。そして残りの4つは電話調査に対応する道徳的、社会的、金銭的、群集心理のインセンティブに見合った見出し
・省エネで環境を守りましょう。
・未来の世代のために省エネに取り組みましょう。
・省エネでお金を節約しましょう。
・ご近所の皆さんと省エネを進めましょう。
その説明文もそれぞれのインセンティブに合ったものに変えランダムに配布した。
効果判定はそれぞれの住宅の実際の電力使用量を計測してその変化にて行った。
結果は、電話アンケートで最下位だった群集心理インセンティブの「ご近所の皆さんと省エネを進めましょう」のカードをかけた住宅群で、他の3つを抑えてダントツの1位だった。
道徳的なインセンティブは一般に考えられているほど効果は高くなく、むしろ逆効果に働く場合すらあります。(機会があれば別に紹介したいと思います)
⇒4/16追加「道徳的なメッセージが逆効果となる!?」
逆に群集心理の影響力は人の行動のあらゆる側面に影響を及ぼしています。売上ランキングやベストセラーなどが目につきやすいところに表示してあるのもそれだけ影響力があるからです。
どちらが良い悪いではなく、そういったバイアスがかかりやすいということを自覚したり、他人と接する際心に留めておくとより本質的な部分が見えてきたり、余計な労力を使わずに済むかもしれません。
コメントをお書きください