歓迎すべき苦しみ
本能的に人は「苦しい」ことを避けようとします。イメージ的なものであったり感覚的なものの場合もありますが、スキルアップに関しては「失敗」と結び付けてしまうようです。
ただし、スキルや才能を磨くにはこの「苦しみ」を避けて通ることは出来ません。「深い練習」をしようとすると自分の能力の限界まで「背伸び」の繰り返しを行わなければならないからです。そしてそれは、「苦しみ」に耐えて行う努力であり、時には歯を食いしばるようなこともあります。
自分の能力の限界で感じる「あともう少しでできる」という感覚は、脳の中に新しい神経回路をつくるときの生みの苦しみです。それをUCLAの心理学者ロバート・ビョーク博士は「歓迎すべき苦しみ」と呼んでいます。
脳も筋肉と同じように、苦痛を経験してはじめて成長するものなのです。
毎日の短い練習
短い練習を毎日することは、それが「深い練習」である限り、長い練習を週に1回するよりも効果的です。それは脳の成長の仕方と深い関わりあいがあります。脳は私たちが寝ている時も含めて毎日少しずつ段階を追って成長するものだからです。
ときたま練習する程度だと脳は遅れを取り戻すことに終始します。ですが、毎日の練習は、たとえそれが5分間の短い練習でも、脳の成長を促進してくれます。
ノースウェスタン大学のチェロ講師ハンス・イェンセンが1日にわずか2分しか練習に割きたくないという多忙な医学生に教えた例があります。
2人は系統立てて練習することにし、曲を細分化して、最も難しい部分から取り組んだそうです。するとその学生は6週間で複雑な練習曲をうまく演奏することができるようになりました。
極端な例かもしれませんが、
「カギは集中力と、どんな小さなミスでも認識して修正したことだ」
とイェンセンは言ったそうです。
また毎日練習することのもうひとつの利点は、それが習慣になることです。複数の調査で、新しい習慣を確立するには約3週間かかることが判明しています。
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